スピッツ「チェリー」久しぶりに自転車に乗ってふと浮かんだ青春時代の青い感じ


「チェリー 」スピッツ   1996年4月10日

草野さんの歌詞は比喩表現が多いのですが、書く歌のテーマは「性」と「死」であると語っています。その為、スピッツの歌に込められた意味は?という考察が多くなります。

かつて音楽番組でタイトルの由来について「僕たちチェリーボーイズと言うこで……」と冗談で言った事から、初体験の歌なのではないか?とも言われたりしましたが、後に、桜(チェリー)は春に咲く花、そういう意味でも何かから抜け出す、出発するようなイメージと補足した事から、大きな意味での「卒業ソング」とも解釈されています。

インタビューで「この曲ってラヴ・ソングにも聴こえるけど、スピッツの今の状況がそのまま表れてるんですよね。」という質問に「うん」と応えています。

そう受けると、この歌は「スピッツの今までと再出発」を歌った歌と解釈する事が出来るのではないでしょうか?

1995年、11枚目のシングル「ロビンソン」がスピッツ初のオリコンチャートTOP10入りし、ミリオンセラーに。翌1996年はドラマ「白線流し」の主題歌に1994年発売の「空も飛べるはず」が起用され、こちらもミリオンセラーに。売れっ子になり忙しい日々が訪れ、そんな中、またツアーが始まる。そんな時にこの曲が生まれたと草野さんは語っています。

「う~ん、これはツアーが始まるちょうど前、秋頃に自転車を買ったんですけども、その自転車乗ってる時に浮かんだメロディーなんです。まあ、全体のイメージとかそういうのが浮かんで。で、自転車に乗るのなんて久しぶりだったから、やっぱ学生の頃のこととか思い出しちゃって。その青い頃のことが自転車からこう導き出された感じ」

売れっ子になった中で、思い出した青い感じ。それを回想している歌とも取る事が出来ます。

君を忘れない 曲がりくねった道を行く
産まれたての太陽と 夢を渡る黄色い砂
二度と戻れない くすぐり合って転げた日
きっと 想像した以上に 騒がしい未来が僕を待ってる

売れっ子になる前の試行錯誤苦労している時代のスピッツを、今の草野さんが俯瞰でみながら、「騒がしい未来が来る」と語りかけている感じがします。

こぼれそうな思い 汚れた手で書き上げた
あの手紙はすぐにでも捨てて欲しいと言ったのに

青い感じを思い出したと言っているので、昔の歌詞とか、粋がっている頃のインタビュー記事とか、今見返すと恥ずかしい物の例えなのではないでしょうか?

ズルしても真面目にも生きてゆける気がしたよ
いつかまた この場所で 君とめぐり会いたい

タイアップやメディア出演が増えてのヒットしていくからくりを感じたけれども、初心を忘れずに、純粋に音楽を楽しみ、本来のスピッツとして活動していくという宣言ののような物。なので、この曲は久々のノンタイアップだし、冒頭の「春に何かから抜け出すイメージ」としてチェリーと名付けた事も繋がります。

この「チェリー」について草野さんはこうも語っています。「地に足をつけてテクテク歩いていく。新たな旅たち」をイメージして書きました。

そして、このCDのジャケットのデザインは自分達が切手になっています。

切手に関しても草野さんはこういう事を言っています。「小学校の頃に切手集めが流行って自分も集め出したのだけど、集めて満足していた時に、ふとこれって死んだ時に何の意味があるんだろう?と、ふと思った」と。

今の成功して満足して悦に浸っていてはダメという、戒めの意味も込められているのではないでしょうか?

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【カバー】

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