スピッツ「美しい鰭」コロナ明けで全員が揃ってスタジオ入りしたから出せた初期のサウンド

『名探偵コナン黒鉄の魚影（くろがねのサブマリン）』の主題歌となった、スピッツ「美しい鰭（ひれ）」。

映画を手がけた立川譲監督は、
まずスピッツさんに書いていただけるということに驚きました。しかも、こういうサスペンスタッチの作品ですから激しめなロック調の曲がくるかと思いきや、すごく優しい曲調だったのでびっくりしました。
と、インタビューで答えています。

それに対しスピッツの草野マサムネさんも
まさかスピッツが名探偵コナンの曲を？と自分達も驚いてます。大変光栄です！コナンはミステリーである以前に、壮大なラブストーリーだと思ってるので「切ない恋の物語」にも「ハラハラな活劇」にも寄り添えるイメージで作りました。
と答えています。

この楽曲はコナンのファンに刺さった他、ストリーミングサービスを中心に若者に大きな反響を巻き起こしています。発売当初は首位を走るYOASOBI「アイドル」に続いて3週連続で2位となっていました。

つい聞きたくなる軽快なサウンドの心地よさは、初期のスピッツにも通じるのですが、それにはコロナで活動の制限をかけられた所から、脱却出来た事が大きく関係していました。

3年10か月ぶりとなるシングル「美しい鰭」。コロナ禍の間、コンサート活動もレコーディングも出来ず、4人でのいつもの活動が完全にストップしていました。この楽曲が収録されたアルバム「ひみつスタジオ」の前に収録した楽曲「猫ちぐら」は、メンバーが一切集まらず、それぞれがバラバラに楽曲収録しました。

これまでに無い収録方法だったので、新しいアルバムをいつリリース出来るか目処も立たず、「今どんな活動をしているのですか？」と聞かれても「秘密の活動をしています」と冗談で答えるしかなかったそうです。完成した時に、そんな苦労を思い出して今回のアルバム名は「ひみつスタジオ」と名付けました。

このアルバムを収録する頃は、メンバー一同でスタジオに入る事が出来、これまでの閉塞感が一気に解放されて、一緒に演奏する事でどんどん楽しくなっていきました。バンドを始めた頃の初期衝動を思い出す事が出来たのです。

そしてコロナ禍で世の中が明るくなかったので、余計に明るい曲を届けたいという気持ちになり、元気が出る曲が作りたいと思うように。それが、あの何度も聞きたくなる心地よいサウンドに込められた願いだったのです。