「シングルベット」シャ乱Q 1994年10月21日リリース
出だしの「流行りの唄も歌えなくて」とはミスチルや米米CLUBの歌の事
NHK「BSヤングバトル」で「ラーメン大好き小池さんの唄」でグランプリを獲得。芸能事務所による争奪戦を受け、意気揚々と上京したシャ乱Qですが、デビューから3作連続オリコン圏外。予想外の苦戦を強いられました。
レコード会社や所属事務所から契約を打ち切られるどうかの瀬戸際に放たれた4枚目のシングル「上・京・物・語」がスマッシュヒットとなり、首の皮一枚繋がりました。
当時、Mr.Childrenや米米CLUBがドラマの主題歌として採用されて大ヒット。しかし自分達にはそういう話がなく、当初は羨ましさ半分でいたのですが、次第にテレビからヒット曲が流れる度に、悔しさで聞けなくなり、チャンネルを変えたりもしていました。カラオケスナックに連れて行かれても、人の曲は悔しくて歌えずにいました。
そんな悔しさの中、もう次が売れなかったら大阪に帰ろうと心に決めて作ったのが「シングルベット」です。この曲はよく実体験ですか？と聞かれる事が多いそうなのですが、実体験ではなく、最初からコンセプトを決めて作られた曲です。
大阪帰って「スナックつんく♂」みたいなお店をやって、「おっちゃん昔プロデビューしとったんやでー」と言ってお客とデュエットしたりして、そんなお店の最後に何を歌うんだろう？という自分を想像しながら作りました。
この曲までは、歌詞っぽい物は書けても、洒落たフレーズを並べるだけで、核となる物、言いたい事、共感出来る物がありませんでした。貧乏は自分達なんだから、ホテルの最上階のスイートルームから観た景色よりも、住んでいる安アパートを舞台にしたリアリティーのあるロマンスを描いた方が共感が得られるハズ。それに気がついて描いたのがこの「シングルベット」です。
歌い出しの「流行りの唄も歌えなくて、ダサいはずのこの俺」は、TVから流れて来るMr.Childrenや米米CLUBに悔しさを感じ、カラオケでも歌えなかった当時のつんく♂さんの気持ちの事を歌っています。
オシャレだと思っていたフレーズや、変なこだわりや余計なものを入れずに素直な自分の気持ち書くことが出来たと思えたのは、メジャーデビューしたから初めてでした。歌詞ってこういう風に書く物だったのかと知ったとつんく♂さんは語ります。そして素直な気もちを歌った歌詞に共感が集まり、オリコン9位に。
この後、「ズルイ女」もヒットすると、この曲もさらに売れてロングセラーとなったのでした。
【カバー】