「愛・おぼえていますか」飯島真理 1984年6月5日リリース
アニソンばかり歌わせられる事とアニメキャラを求められる事に疲れ、アメリカ移住
アニソンの名曲のひとつ「超時空要塞マクロス」の主題歌、飯島真理さんの「愛・おぼえていますか」。実は飯島さんはこの歌を歌う事に抵抗があったそうです。
国立音大ピアノ科の学生時代、シンガーソングライターになる事を目指し、レコード会社に自分で作った楽曲100曲の中から厳選した曲を録音したデモテープを持ち込みました。それが認められて、歌手デビューする前提で話が進んで行きました。
しかし、そんなスタッフの中に飯島さんの甘い声を気に入り、声優のオーディションを受けることを勧めて来た人がいました。飯島さんは乗り気では無かったのですが、「歌手になる前の経験を積むため」と諭さされ、オーディションを受けると、「超時空要塞マクロス」のリン・ミンメイ役に選ばれたのです。
「架空のアイドルキャラクター」という役を歌手が演じるという、現在のアニメの先駆けとなる画期的な試みだったのですが、これが大当たりし、劇場版の主題歌としてリリースされた「愛・覚えていますか」もオリコンランキング最高7位というヒットとなりました。
ただ、これが逆に飯島さんを苦しめる事になります。
マクロスの登場キャラクター「リン・ミンメイ」が歌うという事で、アニメファンは、キャラクターと飯島さんを同化させて好きになっていきました。飯島さん本人はあくまでの歌手としての仕事という意識だったのですが、コンサートに訪れる人達からは「メイミン」と呼ばれ、メイミンのキャラクターで発言したりする事を求められました。
こうした事が続き、歌手になる為の経験の一つと言われた事の比重が重くなっていき、コンサートではアニソンを歌わない事を批判され、それが度重なっ為に「アニメには興味がありません」と発言しまい炎上してしまった事も。
そんな生活に疲れて、1989年にはアメリカに移住する事にしました。アニメと距離を置きたかったからなのですが、マクロスはアメリカでも人気があり注目を集める事に。
ただ、日本と違ったのは、アメリカではリン・ミンメイと飯島真理さんを分けて、人格を混同するような事がなかった為に、徐々に精神的に解放されて、この歌を歌う事にも抵抗が無くなって行きました。
そして、2006年の英語吹替版『Super Dimension Fortress MACROSS』では、英語でリン・ミンメイを演じるなど、マクロスと人生を共にする覚悟も出来ました。
この歌がヒットした1980年代は、それまでのアニソン歌手から、アーティストなどに主題歌を歌わせようという動きのあった時期なのですが、「アニメ=子供のもの」というイメージが強かったので、依頼のあったアーティストは拒否反応を示していました。
今では名曲と言われる杏里さんの「CAT’S EYE」、「機動戦士ガンダム」の主題歌、やしきたかじんさんの「砂の十字架」、「北斗の拳」の主題歌、田中昌之さんの「愛をとりもどせ!!」も、依頼のあった時に一度は拒否した曲です。
今やアニソンを歌いたい歌手であふれている時代には想像出来ないでしょうが、アニソンの地位を向上させたのは、これらのアニソンに拒否反応を持っていた歌手の歌の力だったのです。
【カバー】