「糸」中島みゆき 1998年2月4日リリース
発売から25年たって、印税分配額1位に輝く定番曲に
中島みゆきさんの「糸」は1992年にリリースされたアルバム「EAST ASIA」に収録された一曲でした。今や中島みゆきさんを代表する一曲であり、映画にもなり、共演した菅田将暉さんと小松菜奈さんが結婚するきっかけともなりました。
中島みゆきさんは、1984年のアルバム「はじめまして」から、新たなサウンドを探して迷走し、ロック色を強調するように。自他共に認める「ご乱心の時代」を迎えます。
その「ご乱心の時代」を終わらせたのは、編曲家の瀬尾一三さんと出会ってから。瀬尾さんも、80年代、コンピューターによる曲作りが台頭してきた頃に流行りを追いすぎて迷走した事がありました。そこで流行りを追わずにスタンダードに立ち戻る事に。そんな頃に出会ったのが中島みゆきさんで、スタンダードな方向にプロデュース。なので、この曲が収録された「EAST ASIA」では、その後のコンサート「夜会」の柱となる「二隻の舟」なども生まれています。
「糸」については、アルバムが発売された年の「月刊カドカワ」のインタビューで
かたっぽだけじゃ、できることに限界があるっちゃねえ、っていう歌だわね。男には男の特性が、女には女の特性があって、どっちが上とか、どっちが劣るとかいうことじゃなくてね、それぞれの特性のいちばんおいしいところを合わせて、はじめて物事ってうまくいくんじゃないかとつくづく思うんで。
と、応えています。
しかし「糸」は、しばらく世に出なかった曲です。
アルバムの発売から6年後、テレビドラマ「聖者の行進」の主題歌に起用された「命の別名」のカップリング曲としてシングルリリース。ドラマでも流れたものの、メインは「命の別名」で、ここで日の当たる事はありませんでした。
注目を集め始めたのはアルバムの発売から12年後、干支が一周した2004年。Mr. Childrenの櫻井和寿が参加するBank Bandが、カバーアルバム「沿志奏逢(そうしそうあい)」をリリース。このアルバムの中で、中島みゆきさんの「僕たちの将来」と共に収録されたのが「糸」です。
ミスチルのファンも櫻井さんが歌う知らない曲に注目。徐々にいい曲だと話題になりはじめると、翌年、松嶋菜々子さんが出演する住友生命「LIVE ONE」のCMソングにBank Bandバージョンが起用されました。ここから問い合わせが集まり、元歌が中島みゆきさんだと知れると、中島みゆきさんバージョンも世間に知られる事に。
ここから数々のCMソングで使われるようになり、結婚式の定番ソングともなり、カラオケでの人気曲ともなり、2015年にカラオケランキングで3位に。2016年度の印税分配額1位の国内作品に贈られる「金賞」に輝きました。発売されてから25年目の快挙でした。
【カバー】