「残酷な天使のテーゼ」高橋洋子 1995年10月25日リリース
テーゼとは母親の視点でみた子供の成長の事
アメリカに半年間ボイストレーニングに行っていた高橋洋子さん、しかし半年の間に音楽業界も色々変わり、全く仕事の無い状態になってしまいました。そんな時に作曲家・編曲家の大森俊之さんに相談をしたところ、アニメのテーマソングを歌う仕事ならあるという話を頂きました。当時、高橋洋子さんはキティレコード所属、アニメはキングレコードとレーベルが違い、本来なら許可が出るはずが無かったのですが、相談したところOKが出ました。
そのアニメというのが「新世紀エヴァンゲリオン」
作詞家の及川眠子さんは、アニメの企画書と未完成の2話分のビデオを渡され、これを見て、哲学的な歌詞を書いて欲しいと依頼されます。しかし及川さんは本編をさらっとしか見ず、仕事場にあった萩尾望都さんの漫画「残酷な神が支配する」が目に入り、その世界観がパッと浮かんだそうです。
アニメは14歳の少年少女が主人公ですが、歌うのが高橋洋子さんという事で、子供の視点では難しいと思い母親の視点で書くことにしました。
哲学的な歌詞という依頼もあり、ドイツ語で「命題・定立」という意味の哲学用語の「テーゼ」を使う事に。命題とは「○○は○○である」という定義で、違う見方の事をアンチテーゼと言います。こちらの方が良くきく言葉です。
では「残酷な天使のテーゼ」とは、何でしょうか?
14歳といえば思春期、子供と大人が混じり合い、不安定になりやすい時期です。それまで天使だった子供達が、違う顔を見せ始めます。それまでは親の言う事をきいていた子供が、反抗するようにもなり、そして可愛かった天使が自分の元を離れていこうとする。
いつまでも可愛いと思っていた子供がいつかは自分の所から巣立って行く。これが母親の視点からみたテーゼです。
それは碇シンジと碇ゲンドウという親子の対立の物語が、母親の視点で見守るようなこの歌とシンクロして、多くの人々の心を捉えました。
【カバー】