「あの鐘を鳴らすのはあなた」和田アキ子 1972年3月25日リリース
1位がなかなか取れなず、阿久悠は日本レコード大賞の歌唱賞を取るのにふさわしい曲を書いて欲しいと社長直々に頼まれた!
1960年に有限会社「堀プロダクション」として設立された、現在のホリプロ。当時は、まだ小さな芸能事務所でしたが、これからは、女性タレントを育てていきたいと思っていた堀社長は、大阪に凄い女性シンガーがいると聞いてすぐに向かいました。
会いに行ったのは、ジャズ喫茶で歌っていた和田アキ子さん。その歌声に惚れ込み社長自らがスカウト。
上京させ、デビューさせる事になったのですが、そのプロデュースを任されたのが、作詞家の阿久悠さんだったのです。デビュー当時のキャッチ・コピーは「和製リズム・アンド・ブルースの女王」。
1968年10月に「星空の孤独」でレコードデビュー。「どしゃぶりの雨の中で」「笑って許して」と、今も残る名曲を世に送り出しますが、残念ながらトップ10入りはならず、和田さんは「どうして私は1位になられへんの?」と、阿久悠さんに泣きついた事もあったそうです。
そんな時、阿久悠さんに、堀社長から直々にこんなお願いが。「彼女に、日本レコード大賞の歌唱賞を取るのにふさわしい曲を書いて欲しい」
阿久悠さんも、和田さんの才能に惚れ込んでいました。「はみ出しが許されない時代に、はみ出しの魅力でまかり通る。今までの女性像とは違う種類の魅力がある。」
そこで阿久悠さんは、従来とは違う女性像を書く事にしました。それは、都会の孤独の中で強く生きようとする女性の姿です。
最初に歌詞を見せられた和田さんは、歌い出しの「“あなたに会えてよかった”の出だしの“あなた”は、女性、男性…誰に向けて歌うんですか?」と質問しました。すると阿久悠さんはこう答えました。「人生で出会った、全ての人々」。
1人孤独と戦って来た中で、自分にとっての希望の鐘を鳴らしてくれるのは、出会った人達だという事を歌った曲でした。パワフルな歌声で、希望が見え始めた世界を歌い上げた、和田アキ子さん。見事、この年の日本レコード大賞・最優秀歌唱賞に輝きました。
レコード大賞最優秀歌唱賞受賞発表のとき、和田アキ子さんは感極まり、大粒の涙を流したのが、テレビカメラで大きく映し出されました。
【カバー】